『背中で語る』
個展のために制作した特殊造形作品をご紹介します。濃い体毛を剃って文字を書くようなおバカなセンスを、特殊造形の技術でリアルに再現した、「遊び心」と「クオリティ」にこだわった立体作品です。
実際に男性の背中から型を取り、シリコンゴムなどで成型し、毛の流れなどに注意しながら一本ずつ丁寧に植毛しています。こういった植毛技術は特殊造形ならではのものだと思います。
展示をさせていただいたコミュニティセンターhacoは、福岡を中心とするゲイ・バイセクシャル男性向けに、HIV・AIDS等の予防啓発活動を行っているオープンスペースで、Love Act Fukuoka さんが運営されています。本作品は、このhacoというスペースに対し、特殊造形を使ったアート表現がどのような形で関われるかを意識して制作しました。
背毛を剃るセンスはふざけていますが、メッセージはとても真面目です。「AIDS IS NOT OVER(エイズはまだ終わっていない)」は、2014年世界エイズデー国内啓発キャンペーンテーマであり、エイズの流行と対策が今もなお続いているという現実、そして全ての人がHIVとともに生きているのだという現実を伝えています。
いつかこの「NOT」の部分に毛が生える(=植毛する)日、「AIDS IS OVER」な世界が来ることを願っています。(2014年制作)